福井楽障クラブ
陸上競技 東度 晴美
「伴走しての、頼むざ。」、「ええっ!?」
いきなり言われてびっくりしたのは、5年ほど前のあるイベントの時でした。
当時の私はマラソンランナーと言うのも恥ずかしいくらいの、ウォーキングに毛が生えた程度の初心者でした。
ある日、クラブの先輩に誘われて参加したイベントは、足羽川の河川敷を菜の花を愛でながら走るというもので、中学生の伴走体験も兼ねている、のんびりとした大会でした。
中学生は当然、伴走をはじめて体験するのですが、それに付き添う大人の私も初めてです。
付き添いの大人の人数が足りないといわれ、むりやり「さあ行くよ」と言って伴走ロープを差し出してきたのが、福井楽障クラブの青竹レイ子会長だったのです。
青竹さんは視覚障がい者ランナーのパイオニアとして活躍する経験豊富な方で、初心者のわたしでも大丈夫と言われたのでした。
伴走とは、視覚障がいのマラソンランナーに付き添って伴走ロープでつながり走ることです。視覚障がい者は当然様々な危険がわからないため、我々伴走者が、目となり危険をさけながら、正しい方向に誘導して走らなければなりません。
視覚障がい者ランナーがすることは、自分のペースで走るだけ。すべてを信じて、ついていきます。
あれから5年、何回も転び、道を間違い、障害物にぶつかり・・・。
それでも、彼女は決して文句は言いません。私もやめようとは思いません。
なぜなら、2人で走り切ったその先には、1人の時の何倍もの大きな喜びがあるから。
あの日、菜の花の中で、こわごわ走ったあの時の自分は、今日のこの伴走にどっぷりつかる姿を想像していたでしょうか。
あの時の青竹さんとの出会いが、私の人生の分岐点だったのだと、今なら思います。
今、そしてこれから、障がい者スポーツに関わる人たちは、この思いを経験できるしあわせな人たちだと思います。